第5章 桜並木に包まれて
近藤side
「あのぅ……。」
「あ!お妙さん!」
沸き立った隊員達のせいで、唖然としていたお妙が躊躇いながら声を近藤にかける。
近藤はそんな彼女に感謝の気持ちを伝えた。
「ありがとう。お妙さんのおかげで進展がありそうです。」
「そう、ですか。」
お力になれてよかったです。
淡く、柔らかにお妙が微笑む。
その姿に突き動かされたのか、自然に言葉が溢れていた。
「大事な妹みたいなやつなんです。探してるの。」
話の筋がつかめないのか、お妙は首をかしげるが、構わず近藤は続けていく。
「もし、あいつが見つかったら、友達になってやってください。」
これは、近藤の心からの願いだった。
もし見つけることができたなら、重罪ではあるが、なんとか交渉して命を助けてもらおう。そよ姫もあの人は私に危害を与えなかったと強調していると聞く。
交渉の余地はあるはずだ。
それならば、その後監視の役割として屯所に住ませる。でもそれでは意味がないのだ。
「お妙さんが、友達になってあげてほしい。」
「私……?」
「そうです。男じゃなくて、同じ女の。」
彼女が求めているのは、もう自分達ではない。むしろ、拒絶反応さえ出かねないほど、男にひどいことをされていたと、書類上から予測できた。
そよ姫では幼すぎる。
神楽では心を開かない。
大人でありながら、彼女を包み込める人。
それは、近藤が知りうる限り、一人しかいなかった。
お妙は困惑顔を浮かべたが、確かに頷いた。
それを確認して頭を下げ、皆のもとに走っていく。
近藤は、仲間のもとへ、かつての仲間を取り戻すために、走っていった。