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儚さゆえの愛しさで【銀魂】

第1章 出逢い再び



千里side

千里はゆっくりと外を見た。
この廃墟にこもって既に一時間。

廃墟の外辺りには黒服を着た、憧れであり、千里の英雄であったはずの皆がいた。

申し訳ない気持ちも浮かぶがすぐに気持ちを引き締める。

これが、私の選んだ道だ。
私が信頼するのはあの人だけ。

心のなかでそう唱え、

「表に真選組。局長である近藤、副長土方、一番隊隊長沖田の姿確認できたよ。」

襟元に隠れている通信機に向かってこちらの状況を述べる。

もちろんこれを聞いているの''彼''だ。

『了解。こっちも確認できる。死ぬなよ。』

「大丈夫。援護してくれるんでしょ?」

ばか、と呟く声が聞こえる。
彼の声に安心感を覚えるようになったのは出会った直後だった。
独特の鉄の臭い。花のように咲く血。
それらはまだ、色濃く頭のなかに残っている。

あの時、一瞬沸いた恐怖は高揚に変わった。

今は誰よりも信頼している。
彼の目的は私の目的だから。

くっ、と千里は顎を引いた。目は既に未来に向けており、躊躇いは捨ててきた。
彼等との思い出はここで消す。

確認しよう……。

ふぅ、と息をゆっくりとはき、目を閉じた。

真選組の強さは私がよく知っている。
特に、総悟。

小さい頃に一番手合わせしてもらってた。
勝ったことは一度もない。
もちろん相手も私の剣筋を読んでくるだろう。
今の私の実力だけでどれくらいやりあえるかわからない。


……でも今回は。

ちらり、とまた外を見て、暖かい言葉と背中が大好きだった彼を見る。

ピンと伸びた背筋、引き締まった顔。
そして、稽古が終わると見せる心強い笑顔。
想い出が、脳裏をよぎる。

______________ごめんね近藤さん。

そう思いながら、悲しげに千里は目を伏せる。

それと同時に廃墟から生えたタンポポに手が触れたのを感じた。

視線を移せば、薄暗い灰色の壁に光が反射してやわやわと、優しく色をまとっている。

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