第15章 偽りの愛
美都が万事屋を訪れ、依頼をし、その依頼を万事屋が受けたその夜の事。
美しい夜の月が輝きを放つ、その夜の事。
一人の小汚ない男がある美しい女の前に膝まずいていた。
二人の作る影は目の荒い畳を隠す。
「計画は順調?」
赤い唇から紡がれる言葉。
真っ白な肌に男は目を奪われる。
あぁ、なんて美しい______怪しい光だろうか。
ごくりと男は小さく喉をならす。
そしてまだだと自分に言い聞かせ、頭を下げながら言う。
「はい、雨宮宗並びに三谷千里が主人の妖刀の力を我々は確認しました。ご期待に添えるものだと思われます。」
「まぁ…っ、あぁ、嬉しいわ…。夢のようよ…っ、やっと、やっと見つけたの…っ…あの方の隣にいれる権限をっ!」
くすくすとおかしそうに笑う女。
狂喜に満ちた、真っ黒な瞳に男はまた身震いする。
あぁ、はやく、早く俺に。
自分の本能が大きくなっているのが分かる。
俺は本当にこの人が好きだ。
あいしてる、自分のものにしたい。
そう思ったとき、男の髪の毛がふわりと動いた。
びくりと男が肩をゆらし、顔を恐る恐るあげると、彼女が自分の頭を撫でている。
「いいこ…いいこね。私の大事ないいこちゃん…。ごほうびを、あげなくちゃ。」
そうして彼女は自分の着物の襟に手をかける。
月の光に照らされて彼女の美しい真っ白な体が男の目の前に現れた。
きめ細かな肌だということは遠目でも、経験の少ない男でもわかった。
「好きにして…いいのよ?」
少し潤んだ目を隠すような長いまつげがゆれる。
誘うように、魅了するように。
目が、はなせない。
独特の色香。
漂う色気。
男はゆっくりと手を女の方に伸ばした。
ガサガサの手が柔らかな肌に触れる。
膨らみを、捉える。
「ん…、もっ…と。」
はぁ、と熱い吐息をはきながら女は男の手首を掴み、自分の胸にあてがう。
柔らかな感触に喜びを覚えながら男は女の瞳を見つめ、言葉を紡いだ。
「貴女を愛してもよろしいですか。」
女はその言葉に頷くと、病的な瞳を彼に向けた。
そして彼の耳に自身の口元をよせる。
その様子はまるで獲物をとらえた蛇のよう。
もう彼は彼女から逃げられない。
ひとつ、彼の耳に口づけをおとす女。
そして、彼を快楽の沼へと突き落とす。
「えぇ、梔子は今、貴方のものよ。」