第1章 出逢い再び
××side
「ありがとう。」
じゃあ後で、そう言って通信を切る。
彼女はどんな思いで今の気持ちを俺に伝えてくれたのだろう。
彼女が一番辛いはずなのに。
彼女が憎むもの。
俺が憎むもの。
たまたまそれが同じなだけなのに。どうしてここまで俺と共に来てくれるのか。
________いや、もう答えは出てる。
憎いからだ。自分の家族を殺したものが。
恨めしいからだ。自分の家族を殺したものが笑って生きていることが。
罪は罪なのだ。
人から大事なものを奪って、のうのうと生きているなんて許せない。
「滅べ偽善者。」
彼女だけだった。
あなたは悪くない、と言ったのは。
殺してもよかったんだと。
殺すのが正解だったのだと。
赦されるわけがないと。
左手に刀をもって血まみれだった俺を見て、少し絶句した後に彼女が言った言葉だった。
しかも、ありがとう、と。
だからかもしれない。
俺はアイツをここにつれてきた。
そしてそれは偶然か必然か。
俺の復讐を誓ったやつが奇しくもアイツの親を殺した黒幕で。
黒幕が幕府の役人だと知ったのはそれから2か月後のことだった。
今ではそいつらを皆殺ししたうえで、幕府を根本から叩くと決めている。
罵るなら罵ればいい。
たとえ、非道徳だとなじられようが、あぶられようがやめるつもりはない。
この身が果てるまで。
彼女と共に殺戮の日々を生きるのだ。
彼女は人を殺すことは好まないが、それは優しいからだろう。
いざ親の仇を打つときは鬼と化す。
そんな危うさも持っている。
彼は睫毛を揺らしながら前を見据えた。
もう後戻りは出来ない。
そう、決心しながら。
彼の名は雨宮宗。
妖刀''雨龍''の持ち主であり、''雪螢''の元主人である。