第13章 傷と罰
銀時side
_______解せぬ。
そんなことを思いながら銀時は長いため息をはき、目の前の二人を見た。
長い黒髪を持つ自分の服を着ている少女と。
一緒に暮らしている天人の少女と。
二人は頬を緩ませながら、近くにできた武器屋の話に花を咲かせている。
内容も内容だが、銀時にはもうひとつ理解できないことが存在した。
「おいお前ら、いつから仲良くなったわけ。」
そう、この二人。
犬猿の仲という表現がぴったりなほど息の合わなかった神楽と千里のことだった。
俺の記憶違いか?
そう錯覚させるほど今の二人は仲むつまじい。頬は溢れんばかりに笑顔が溢れている。
二人はフフっと怪しげな笑みを同時に浮かべた。まるでいたずらが成功した子供のように。どちらもバカ強いため、正直可愛いとは感じられず、卑しさが出ていたが。
あえてそこには言及せず、銀時はお手上げのポーズを取り、二人を促した。
二人は1度目を合わせたあと、また楽しそうに笑う。そして千里が神楽を誘うように手を差し出した。
正しくは"差し出す"ではなく"促す"という意味なのだろうが、その時の銀時には千里のその仕草さえ、仲のよさを感じてしまう。
それほど二人の間には暖かな優しさが漂っていたのだ。
そんな銀時の気持ちも知らないで、神楽はこほんと一つ咳払いをする。
胸を張り、口許に右手を持っていく姿は偉い人の真似だろう。
そんなポーズに優しく唇をほころばせる彼女にやっぱり複雑な気持ちを抱えながら、神楽の次の言葉を銀時は待った。
「とりあえず、千里が訪ねてきたネ。」
「おじゃましまぁーす。」
ケタケタと笑う姿は何故かあの日の神楽の兄貴にダブる。危うさの中の愉しさとでも表象するのがピッタリだ。
「で、お茶を出したら千里はそれを溢して服べちょべちょになったアルよ。」
神楽の指差した方を見れば見慣れない着物がゆらゆらとか風揺れていた。
成る程、見かけない服だと思ったら……。
「で、銀ちゃんの服を貸してもらったアル。」
「そこ結構おかしいよね?どうして神楽ちゃんの服じゃないの?」
「試したけどツンツルテンネ。」
「いや、でも仮にも男の服だよ?君もさ、イヤじゃないの?断りなよ。」
「確かに若干加齢臭がしますけど、別にいいです。」
「オイ!」