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儚さゆえの愛しさで【銀魂】

第12章 地球の友達



千里side

「おはよー!宗!」

桂とカラオケに行き、神威と再会し、目まぐるしい一日が終わった次の日。
千里は台所で一人、朝食を作っていた宗に後ろから抱きついた。

宗の大きな背中はびくともせず、千里を受け止める。

「おはよう、千里。」

「うんうん、おはよ。朝ごはんなに?」

ひょこっと首を曲げて覗きこめば、オムレツとミニトマト、ウインナーが載っている皿が目に入った。

特にオムレツが食欲をそそる薫りを撒き散らす。

「おいしそう!早く食べよ!」

「んじゃ、フォークとスプーン用意してくれ。」

「パンは!?パンは!?」

「お望み通りのパン買ってきてあるから。」

勢いよく千里は宗の指先を追っていくと、そこにはハルイロベーカリーの文字が踊っている袋があった。

ごそごそと中身を漁れば、胡桃パン、あんパン、ピザパン、ワサビパンが入っている。

「またワサビパン買ってきてくれたの?」

「よく言うぜ……買ってこないと怒るくせに。」

おかげでハルイロベーカリーの店員にワサビ君なんて呼ばれてて……。

はぁー、と長いため息をつく宗。
そんな宗に千里は噛みついた。

「手駒にしてる女?」

その一言に宗がぴくりと肩を揺らす。
視線がこちらに向いているのが何となくわかったが、千里はそちらを向く気はなかった。

その代わり唇を尖らして、

「口の固い女ならいいんだけど。」

と、愚痴るように言う。

その言葉の節々からはヤキモチとも捉えられる思いだけでなく、宗を気遣う様子が伺えた。

宗は少し呆気にとられたあと、唇を上げ、微笑む。

「心配すんな。別にそんな対したことは聞いてねーよ。」

宗は女との関係で一度も嘘をついたことがない。否定もしたことない。
つまりは、そのハルイロベーカリーやらにいる店員と体の関係で。

情報を少しずつ引き出しているのだろう。

とはいってもパン屋からそんなに情報が得られるものなのか、と何度も不思議には思ってはいるが。

「そ。」

深追いはしない。

そして千里は気まずい空気を消すように笑顔で宗に向かって笑う。

胸がチクチクするのは……気のせいだ。

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