第11章 それは慟哭の鐘
銀時side
そんな千里のそばに一人の男が腕を組んで佇んでいた。
腰には木刀。
太陽の光を反射して儚気に光る銀髪。
片腕抜きという若干厨二臭さが漂う男が一人。
その風貌を持つものは、江戸に一人しか存在しなかった。
「ますます謎が深まるばかりだぜ……。」
銀時は路地裏で小さく呟いた。
対象に気が付かれないように、細心の注意を払いながら。
大分小さくなった彼女の背中を見守るように。
神楽の兄貴まで出てくるたァ……。
銀時は肩をすくめる。
考えることが多く、人物の相関図を一度書いた方がいいんじゃないか、と本気で思い始めていた。
______千里を見かけたのはたまたまだった。
声をかけようと思った銀時は人通りの少ない方があちらにとって都合がいいだろうと、大分距離をあけてつけいたのだ。
その時に銀時は彼女をつける彼の存在に気がついた。
一瞬見間違いかもしれないともおもった。
しかしオレンジ色の髪が揺れる度に確信せざるを得なかった。
声をかけることも躊躇われ、二人の会話、行動を盗み見ることになってしまい、今に至る。
「まさか見せつけられるとはねぇ……。」
神威が銀時の姿に気がついていたかは定かではないが、何にせよ二人の関係が一筋縄ではないのは確かだ。
神楽の兄貴を知ってる、そう言ったときから予測はついてたが……。
銀時は目を伏せ、彼女の言葉を反芻した。
『大切な人を悲しませる強さは……強さじゃないんだよ。』
その言葉が銀時の胸を軋ませる。
ギリギリと彼の心を縛り上げ、血を吐く寸前まで斬りつける。
悲哀に満ち溢れ、後悔が留まることを知らず、まるで全てを悟ったかのような言葉。
「……帰るか。」
銀時は重たい足を引きずり、お登勢の元に向かう。一杯、長谷川とひっかけるか、そんな風に考えて。
いつになく真面目な瞳で前を見据えながら、銀時は帰路についた。