第11章 それは慟哭の鐘
千里side
目の裏に広がるのは海のように深い色をしたアクアマリン。
お風呂上がりの濡れた髪。
すべてを見透かすような幼い瞳。
『ビックリした。まさか君も殺し屋なんて。』
驚きで声を失う綺麗に着飾った私。
爪のネイルに仕込んだ毒が彼の首に突き刺さる前に効力を失おうとしていた。
『どうするの?その爪先の毒。』
私は考えた。
彼を殺すには彼に戦闘を挑むしかないのか。
でもこの人はあのときと同じ。
夜兎族だ。
死ぬかもしれない。
否。
一人で挑んだら死ぬに決まってる。
あの夜の晩、神威と向き合った瞬間。
私のなかに出てきちゃいけない思いが浮かんだ。
______________死にたくない。
何に対して死にたくなかったんだろう。
もう心はずたぼろで死んでいたというのに。
とっくに全ては死んでいたのに。
______________死にたくない。
私があの時あんなことを思わないで躊躇わずに小太刀を抜いていたら。
それで死んでしまっても、褒美として姉上だけでもみんなのもとに行けたかもしれないのに。
______________死にたくない。
私はどうしてあんなこと思ったんだろう。
死にたいって何度も思ってきたのに。