第8章 紅葉
急に舞い上がった紅葉《モミジ》がヒラヒラと舞い降りてくる。
それはまるで空から降って来るようで幻想的な景色として目の前の状況をただただ見つめていた。
ほんの少しだけ冷たい指先が触れる。
お互いの体温を感じた俺たちは、ハッとしたようにお互いに視線を向けた。
マフラーに首をすくめるようにしているは上目遣いで俺を見上げていた。
「マフラーはしてきたのに、手袋は忘れたのかぁ?」
俺がからかい混じりに言うとは頬を赤くしてボソっと呟いた。
「スガ君と手を繋ぎたかったから。」
俺はに目線を合わせるように、顔を覗き込んだ。
照れ隠しのようにマフラーに亀のように首を竦める。
そんな仕草が可愛い。
「俺も手繋ぎたい。」
の眼の前でニカっと笑って見せると少し不貞腐れたように頬を膨らませた。
冷たくなったの指先を温めるように手を握る。
「スガ君の手っていつも温かいね。」
ガサッ…ガサッ…
重なり合った落ち葉が、歩くたびに音を立てる。
「体温が高いからな。はすぐ冷たくなるもんな。」
「うん。」
少し歩くと視界が開けて、町を一望出来る位の小高い丘へたどり着いた。
山だけでなく町の樹々もすっかり紅や黄色に染まっている。
春は一面がピンク色に染まる景色を思い出して、月日の流れる速さを実感した。
「?」
「うん?」
「冬も春も夏も…この先ずっと一緒にこの景色見るべ。」
「そうだね。ずっと…一緒にいようね。」
が嬉しそうに笑った。
「ちょっと寒いけど…」
の口元を覆うマフラーを少しだけ下に下げる。
「と何度もチュウしたい。」
恥ずかしそうに俯いたの瞼が降りた瞬間。
俺はそっとに唇を重ねた。