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【黒バス】今夜もアイシテル

第46章 スイーツ



半年ぶりの母校。

東京の生活に馴染みはじめた身体に、少し肌寒い空気が心地いい。

首のリングの存在を指で確かめると、氷室辰也は慣れた足取りで体育館へと向かった。





「アレ〜、室ちんじゃん?どーしたの」

「元気そうだね。アツシ」

肩までの髪は、淡い紫。

インターハイ以来の再会だというのに、特に驚いた様子もなく近づいてくる二メートルの長身に、氷室はやわらかく微笑んだ。

「なに、その笑い」

「いや。頑張ってるなと思ってさ」

「別に頑張ってるわけじゃねーし」とそっぽを向いた後輩は、だがその言葉を裏切るように肩でひとつ息をついた。

彼の心に確実に存在するバスケへの情熱を、もう確かめる必要はない。

「あ、そうだ。これアツシにと思って」

「え〜、なになに?うわ、これ地域限定のまいう棒じゃん」と目を輝かせ、お菓子を漁っていた紫原が、何かを思い出したようにふと手を止めた。

「そーいえば、今日って室ちんの誕生日じゃなかったっけ?うん……このもんじゃ焼き味、なかなかイケるかも」

竹刀を手に取ろうとする監督を片手でなだめながら、さっそくお菓子をくわえる“美味しい口”を見つめる瞳がやわらかく綻ぶ。

「はは、覚えててくれて嬉しいよ。別にプレゼントをねだりに来たわけじゃないんけど……そうだな、良かったら少し練習に混ざってもいいかな」

「え〜、室ちんも相変わらず物好きだね。ま、別にいいけど〜」

「お手柔らかに頼むよ」

スイーツよりも甘い声。

だが、その甘いマスクの下に秘められた情熱を、知る者は多くない。

「まさ子ち〜ん。室ちんが練習したいって」

「監督と呼べ!」

懐かしいやりとりを聞きながら軽く会釈をし、体育館に足を踏み入れた氷室のバッシュが、キュキュッと軽快な音を立てた。






Happy birthday to T.Himuro.






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