第40章 ストーリー
全国制覇
その称号は、キセキの世代の天才と言われた黄瀬涼太率いる海常の力を持ってしても、手にすることは出来なかった。
個々の能力を最大限に生かす赤司を軸とし、多彩な攻めと強固な守りを最高レベルにまで高めた洛山を、倒すためには何が足りなくて何が必要だったのか。
「79対73で洛山高校の勝ち!礼!」
「「「有難うございました!!」」」
学ぶこと、反省することは山積みだ。
だが今は、勝者に祝福の言葉と、次の戦いの約束を。
「赤司っちにはやっぱ敵わないっスわ」
「思ってもいない事をいうんじゃない、黄瀬」
握手を交わす手から伝わる無念さと、金の瞳に色濃く宿る闘争心。
海常を支える柱へと成長したかつてのチームメイトの姿に、赤司は目の奥でひっそりと笑った。
「いい試合だった。次は、ウィンターカップで会おう」
「モチロン!次は絶対に負けないっスよ!」
次の目標と敗北の悔しさを胸に刻み、額の汗を腕で拭うと、黄瀬涼太はコートの上で爽やかに笑った。
それは、すべてを出し尽くしたからこそ浮かぶ、心からの笑顔だった。
「きゃあーー!黄瀬くーーん!」
「こっち向いてぇーーっ!」
頭上から降り注ぐ場違いな声に一切応えることはなく、黄瀬は死力を尽くしてコートに崩れ落ちるチームメイトに手を差し伸べた。
「黄瀬……」
「帰ったら、監督より厳しいウチのマネージャーに、座る暇もないくらい走り込まされるっスよ、きっと」
「怖いな、それ……」
「ハハ。自分で言っといてなんだけど、オレも今ちょっと冷や汗かいたっスわ」
二年前、肩を貸してくれた先輩とようやく同じスタートラインに立てた気がして、黄瀬はぶるりと身体を震わせた。
「……これからだ。次は……絶対に次こそは、掴んでみせる」
仲間に肩を貸して、上を向く雄々しいその姿は、最新のファッションを身に纏う時よりも眩しい輝きを放っていた。