第2章 キャプテン・アメリカ×職員
カシャッ
カシャッ
「……またですかキャプテン。」
「だいぶ上達しただろう?」
「まぁ、そうですね。」
振り向けば笑顔でスマホを手にしているキャプテン。
最近は見慣れた画だ。
「でも私じゃなくてもっと別の人も撮らないんですか。ナターシャなんてどうです?美人ですし。」
「初めはみんな黙って撮らせてくれたんだけど、今じゃコレを手にしてるのを見ると急用が出来る様でね。」
キャプテンはおどけた様に肩をくすませる。
確かに撮られ続けるのはどうかと思う。
「みんなって、アベンジャーズを撮ってたんですか?」
「あぁ、そうだけど。」
それを聞き、キャプテンのスマホはとてつもない価値がある事に気づいた。
アイアンマンであるトニー・スタークが居るだけで凄いのに、エージェントであるナターシャやバートンなんて仕事柄撮らせて貰えないと思っていた。
先程言ったナターシャに撮らせて貰え、というのも冗談のつもりだったのに。
しかもキャプテンは何でもないという様に話している。
「キャプテンって天然って言われません?」
「なんだい急に。」
「…いえ、何でもありません。そういえば前から気になっていたんですが、何故写真を?」
「あぁ、何て言うか……、大した事じゃ無いんだ。」
キャプテンの視線が足元に下がる。
「その、僕が起きた時、何にもなかったんだ。あるのは誰かが撮っていた軍のテープだけで、私物も無くなったし。だから、残せる物は残しとこうかなって。僕等の仕事は特に何が起こるかわからないから。」
それにコレ面白いしね。とキャプテンは笑うが、その目は少し悲しげで、
「面白いのはわかりますが、」
キャプテンからスマホを引ったくり、内カメラへ設定しキャプテンに顔を近づけ構えた。
「こういうのは誰かと撮る方が面白いです。」
カシャッ
スマホには少し微笑む私と、目を見開くキャプテン。
スマホをキャプテンに返すと、キャプテンはそれを眺め、微笑んだ。
その笑みには悲しみは少しも存在しなかった。
最高の写真だね。
そう70年後の世界で彼は笑った。
end.