第7章 クリソプレーズの囁き
誰かが言っていた通り、早い時間から雨が降り始めた。
時間が立っても雨足は弱まらず、あげくには遠くの方で雷も鳴り始めている。
ロッカは窓ガラス越しに、灯る明かりの少なくなったゼラムの街並みを見つめていた。
(…アレスさんは、どこかの宿にでも泊まったのだろうか)
こんな天気に彼女を放り出したのは、紛れもない自分自身だ。
アレスは自ら屋敷を出て行ったけれど、そのきっかけを作ったのは僕が彼女を責め立てたからで。
彼女は寂しそうに、笑っていた。
「…どうすれば良かったんだろう…」
彼女はレルムの村で、僕たちを庇ってくれた。
ー黒の旅団と繋がっていたー
彼女は湿原で、アメルを庇ってくれた。
ー黒騎士たちは悪党じゃないと言ったー
アレスの真意が掴めずに、心が揺れ動く。
裏切られた気持ちと、信じていたかった気持ち。僕はまだアレスを信用しているのだろうか。