第6章 アイオライトの涙
ゼルフィルドはその思考回路を逡巡させて、震えるアレスに答えた。
「我ガ奴等ヲ殺サナケレバ、オ前ガ殺シテイタダロウ」
「っ!!」
その事実に、アレスは我が身を抱きしめて泣く。
「オ前ガ人ヲ殺ス事ヲ拒絶シテイタノハワカッタ。オ前ガ人ヲ殺シテシマエバ、オ前ノ心ガ壊レルト思ッタ」
だから殺したのだと、ゼルフィルドは言った。
アレスはしばらくの間何も答える事が出来ず、その間遠くの雷が一瞬だけゼルフィルドとニ体の死体を照らし出す光景を無表情で見つめていた。
「…コノママデハ風邪ヲヒク。引キ上ゲルゾ」
ゼルフィルドが軽々とアレスを抱き上げる。
機械ゆえにアレスの温もりを感じる事は出来ないが、彼女の唇が蒼くなっている事に、寒気を感じていることを理解した。
「…どこに行くの?」
「将ノ下ダ」
「ルヴァイドに会えるのね…」
恋しそうにその名を口ずさんで、アレスはゼルフィルドの腕に身を任せると意識を手放した。
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