第1章 カルセドニーの導き
アレスはその面持ちの暗さに、作業の手を止めて向き直った。
「そんな顔しないで下さい」
聖王家の管理下に置かれたとしても、悪いようにはなりませんよ。
「それに私は村人の意志を尊重しますから。秘めていて欲しければ、私から聖王家に何かを言うことはありません」
「…それで良いのか…?」
「それで良いんです」
フフフ、と笑うアレス。
その微笑みに、なるほどロッカが気に入る訳じゃな、とアグラバインは胸中でボヤいた。
そんな事を知る由もないアレスは、ある事を思い出して手を叩く。
「そういえば、この村に来る前に行商からお菓子を買ったんでした!みんなで食べましょう!」
「なら、ワシは自慢の漬け物を出そうかの」
ようやく一息つけることに、アレスは心底から喜んだ。
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