【ハイキュー】その日まで(poco a poco3)
第4章 まつりのあと
澤村と清水は、夜の道を黙々と歩いていた。
「そんなに気にするなら教えてあげればいいのに。」
清水がぼそりと言った。
「聞こえてたのか?」
「ところどころね。
でも美和ちゃんは気付いてないと思うよ。
あの子はこっちの話に夢中だったから。」
「そうか。」
澤村はまいったなーと頭を掻いた。
「澤村らしくないね。」
「そうか?」
「菅原と美和ちゃんのこと、じれったいんでしょ。
澤村が二人の手を引けばすぐに解決しそうなのに。」
「お前だってらしくないべ。
そんなに人のこと気にするなんてさ。」
澤村が少し意地悪く言い返した。
「ほっといて……。」
「はいはい。」
清水が黙ってしまったので、澤村が言葉を繋ぐ。
「俺はさ、あの二人に肩入れするの、正直ちょっと面白くないんだわ。」
清水は何も言わない。
「立花とスガはさ、放っといても上手くいきそうじゃん。
でもスガのこと好きなのは、立花だけじゃないと思うから。」
清水が視線をあげる。無意識に金魚の紐を持つ手に力が入る。
澤村はそれには気づかないふりをして
「あいつモテるからさ。特に誰とはいわないけど。」
そう付け加える。
「だからさ、なんか最初から有利な奴に力添えするのって、
あんまり気分良くないっていうか。
別にあの二人のことが憎いわけじゃないし、
特に立花の悩んでるのは痛々しいくらいだから、ついお節介しちゃうこともあるんだけどさ。」
「うん……。」
清水は静かに頷いた。
「それとも、清水は、あの二人が早くくっついたほうが楽になる?」
「……。」
「だったら俺はすぐにでもそうするけど。」
「別に。私には……関係ないから。」
「はは、そうだな。悪かったな変なこと言って。」
そう言って澤村は小さく笑った。
それから少し重くなった空気を振り払うように話題をすり替えた。
「さすがに夜は冷えるなー。
こついの前まで暑い暑いって思ってたのに。
清水、寒くないか?」
「うん、平気。ありがと。」
秋の夜は、皆の気持ちを闇で隠して、静かに流れていく……。
「まわりみちの行方」へつづく