【ハイキュー】その日まで(poco a poco3)
第3章 秋祭り
「スガはこの前の合宿でも立花が他校の男子と話してるのだって全部気にしてたし、
何かあるたびに心配で仕方ない様子でさ。
今の状況だって、あいつが知ったらきっと慌ててすっ飛んでくるぞ。
スガは、なぜか俺が立花に手を出すって結構本気で疑ってるから。」
そんなわけないのにな、と軽く否定の言葉を添えて、澤村は少し笑った。
「それはさ、全部保護者みたいな感じなんだよ。
こうちゃん優しいから……。」
立花は足元に目線を落とす。
下駄からのぞく足の爪には、ペディキュアがキラリと光る。
「お前らはずっと近くにいるはずなのに、大事なことはイマイチ伝わってない気がするんだよな。
このままだとあっという間に卒業して、立花が言うとおり離れて終っちまうぞ。
俺は、それはもったいないと思う。
まあ、俺から言えるのはこのくらいかな。あとはちゃんと本人に聞きな。」
澤村の言葉に、立花は少しの間考えてから、
遠慮がちにつぶやいた。
「澤村君、あのね……。」
立花の声を阻むように、真っ暗な夜空がぱっと明るくなった。数秒遅れて、爆発音。
「わ!花火。」
「おお、ここからでも見えるのか。」
二人は次々に咲く花火にくぎ付けになる。
「キレイ。すごい。こんなの久しぶり。
みんなも見てるかなー?」
はしゃぐ立花に、澤村はやれやれと心の中でため息をつく。
(何か言いかけてたのも気になるけど、まあ、少しは元気になったら良しとするか。スガといい立花といい……)
「まったく、二人とも手がかかる。」
「え?」
「こっちの話。」
そう答えて、澤村はスマホを取り出してLINEを開く
「今日はこのまま流れ解散。」
そう連絡すると
次々に了解の返信が来て、澤村は再び花火に視線を戻した。
「まつりのあと」へ続く