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【ハイキュー】その日まで(poco a poco3)

第10章 番外編


「ええ?じゃあ、昨日は一日だけ小学生になってたってこと?」

驚くべきことに、立花自身は昨日のことを全く覚えていなかった。

「こうちゃん頭でも打ったんじゃないの?大丈夫?」

「そんなに信じられないならバレー部のみんなにきいてみろよ。
あいつらも8歳のみーに大分振り回されてたから。特に月島な。」

学校へ向かう道を並んで歩きながら、二人は言葉を交わす。

「しかし、不思議なこともあるもんだよなー。一体なにがどうなっているのやら。」

菅原がうーんと唸っている隣で、

「もしかしたら……。」

「え、なに?なにか原因でも分かった?」

「私、8歳の頃仲の良かった友達が突然引っ越して行っちゃったことがあって、ほら同じクラスの。こうちゃん覚えてない?」

「あー、なんとなく?みーと毎日一緒に遊んでた子だよね。」

「うん、そう。でね、そういう経験が初めてだったから、すごく寂しかったし、怖くなっちゃったんだよね。
こうちゃんもいつか急にいなくなっちゃうんじゃないかって。家で泣き出して親を困らせたこともあったんだよ。
夜寝る前にね、こうちゃんとずっと一緒にいられますようにってお願いしてたの。」

「なんだよそれ。」

「かわいいでしょ。」

「自分で言うなよ。」

ふふっと顔を見合わせて笑ってから、立花は続きを話し始める。

「その頃、夢をみたの。高校生のこうちゃんに会う夢。
そこで、俺とみーはずっと一緒にいるから安心していいよ。って言ってもらうの。その日から、怖くなくなったんだよ。」

「それって……。」

「不思議だよね。私もそんな夢を見たこともすっかり忘れてたのに。いま急に思い出した。」

これは単なる偶然だろうか。

菅原は少しだけ前を歩く彼女の背中を見つめる。

ふわりと優しく拭いた風で、制服のスカートが切なく揺れる。

「こうちゃん、はやくー。」

振り返る彼女に向かって、再び足を動かした。




『poco a poco』 Fin.
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