第2章 合宿
学校の寮で生活をしていて、東京に実家がある者は現地集合となっている。
なので晴気も朝早くに家を出た。両親と兄はわざわざ起きて見送ってくれた。
ママチャリをこいで山へ。名前は忘れてしまったが、ママチャリには険しい山だ。
それほど高い山でもないため、山頂はすぐだった。
「お、長谷川。はやいじゃん。」
「おはようございます。奈木先輩。」
いつもニコニコ笑顔の三年の奈木赤褐(なきせきか)。女みたいで珍しい名前でしょ、と自己紹介で言われたのが晴気には印象深かった。
「先輩こそ早いですねー。」
「あぁ、俺は今年じゃん負けして掃除当番なんだ。毎年恒例、三年の合宿所早朝大掃除。
この合宿所、普段使われてないからね。掃除が必要なんだ。」
「全部一人で掃除するんですか?」
晴気は合宿所を見上げる。それほど汚くはないがなかなかの大きさだ。
「違う違う。マネージャーもいるから。女子だけじゃ大変だから男手が必要でしょ。長谷川は何でこんなに早いの?」
「いやー、ママチャリで行くからもっと時間かかるかなーって思ったんですけど思いのほか早くついちゃって…。ついでに掃除します。」
「それはよかった。」
後ろからポンと肩に手をおかれ、晴気はハッと振り返った。
「あぁ…君か。驚かさないでよ。」
「そんなつもりはなかった。」
そこにいたのは、奈木望(なきのぞみ)。奈木先輩の妹で、一年生だ。
「片割れは?」
「明なら、もう中に入ってる。」
明(あけみ)とは、望の双子の姉。望と違い喜怒哀楽が激しいのが特徴だ。
「えーっと、二年の奈木さん達は?」
「哲(てつし)と悟(さとる)なら、ジョギングするってさ。」
薊河には、五人の奈木がいる。
長男、奈木赤褐
次男、奈木哲
三男、奈木悟
長女、奈木明
次女、奈木望
五人兄弟が見事にそろっているのだ。しかも全員バスケ部。
しかも全員なかなか似ているのでごちゃまぜになってしまい、バスケ部員が頭を抱えることもしばしばだ。