第2章 合宿
黒子達と別れを告げ、長谷川は実家へと帰宅。
家族からのもてなしを受け、ゆっくりのんびりと過ごす。
「ただいまー」
リビングでダラダラとしていると、玄関から声が聞こえてきた。
「あら、帰ってきたんじゃない?」
キッチンで洗い物をしていた母はスリッパをパタパタいわせて玄関へ。
「晴気、叶太が帰ってきたぞ。」
父は嬉しそうに話しかけてきた。
叶太(かなた)とは、晴気の兄だ。
「あー疲れた。うぉっ!晴気っ!?」
「うるさいよ…」
「第一声それ!?」
「まぁ確かにうるさいな」
「父さん…!」
ビシッとしたスーツ姿の叶太を見ると、兄なのに遠い人のようだ。
やはり、10才もはなれているとそうなるのだろうか。
「晴気は明日から合宿なんですって。」
「へー、合宿?懐かしいなー!俺も行ったわぁ」
ちなみに叶太は中学は帝光、高校は薊河と晴気と全く一緒だ。
「やっぱ新潟と沖縄からくんのか?」
「うん」
「あいつら東京タワーはどこだー!とか言ってうるさかったなー!」
「うるさいのは兄さんだよ」
「ひどっ!」
ショボーンとした叶太に目もくれず晴気はテレビに見入る作戦に入った。
正直うざかった。
「晴気ぃ、お前さぁ…」
「うるさいキモイ黙って」
「うっ!」
「ふふ、晴気ったら」
「笑い事!?」
このやり取り、家に帰ってきたって感じだ…と晴気は少し嬉しかった。
「あ、嬉しい顔した!」
「何それ…してないから」
「ツンデレだなー!あ、そーだ。薊河の監督さぁ、誰になったんだ?変わったんだろ?」
叶太はネクタイを緩めながら聞いてきた。
「白子八重(しらすやえ)って人。女の人だけと、すごい怖くて…」
「え……」
叶太はいきなりドサッと鞄を落とした。
「あいつ、が…」
「叶太?どうしたんだ?」
父が鞄を拾い、叶太に渡す。叶太は震える手でそれを受け取った。
「いや、何でもない。疲れてんのかな…若いのにジジくせぇ」
「そう?お風呂わかしてるからゆっくりね。」
「うん!」
晴気はボーッとそんな叶太を見つめていた。
監督の名前を言った瞬間、おかしくなった。何かあるのだろうか……