第5章 Episodes櫻井:優しさの裏と表
「お兄ちゃん部屋汚いから
綺麗に片付けといて。萌乃は
友達と遊びに出かけるから。よろしく」
家での立場は俺が一番下。
評価を上げるだけの、
ただの道具でしかない
そんな事は分かってた。
だから何度も逃げ出した。
そのたびに連れ戻されて
説教を受けた
時々ひどい暴力もあった
そんな日常の中で、
俺の心の拠り所は幼馴染みだった
俺には2人の幼馴染みがいて、
1人は大財閥の息子のニノ
そしてもう1人は名家の一人娘
よく家に顔を出しては
俺に優しくしてくれた。
「また傷が増えてる
おじ様、相変わらずなのね」
「平気。俺が我慢さえすれば」
「あざは消えても完全には
なくならない。翔さん、いい?
我慢なんてしないで私の家に来て
きっとお父様も助けて下さるわ」
「ううん、大丈夫。そうなったら
きっと父が狂って母に手を出す」
彼女は来城芹奈。
実家は力もお金もある大きな家で
家なんて簡単にひねり潰せる程だった
ただ、セリナとの交友は、
父にとって好都合であり
そして不快なものであった