第3章 目の前に現れた猫と紫の青年
朝の占いのおかげで
わくわくした
楽しい気分で道を歩いていると、
ふいに
自分の足元にふわふわとした
モノが触れた気がした。
ん?
不思議に思って、
下の方に目をむけると…。
〔にゃあ!〕
そこにいたのは茶色の毛の
小さな仔猫。
元気な声で鳴き、
足元にスリスリと体をすり寄せて
一生懸命甘えてくる姿が凄く可愛らしい。
「可愛いなぁ…。でも、捨て猫かな…?」
もし捨てられたなら
体の所々に汚れが目立つから、
結構前に捨てられたんだろうな…。
可愛そうに…と呟いて
その場にしゃがみ、
仔猫の頭を撫でると、喉を鳴らして喜んでくれた。
〔帰りも此処に居てくれたら、家につれてかえろうかな…〕
許してもらえるかなぁ…
悩みながら
自分の手を
仔猫の腹の上に乗せじゃれさせながら
そんな事を思っていると…
「にゃあん」
突然、猫が飛び起き
勢い良く走り去ってしまった。
「あ…行っちゃった。」
追いかけようと慌てて立ち上がっても
仔猫の姿はもう影も形もない。
あーあ…
飼うことを割と
本気で考え始めていた#MAME5#は、
ションボリと
肩を落としながら学校にむかった。
学校まで後、一キロ先の所にある
横断歩道が丁度赤になり足を止める。
「はぁ…あの仔猫可愛かったなぁ…」
たった一回しかあってないのに
凄く印象に残ったあの仔猫が
頭から離れず、思わずため息を吐いた。
何も知らないで
いきなり一匹で外に出された
小さな小さな仔猫。
いつか飼い主さんが
迎えに来ると信じてあそこでまちつづけるのかな…。
あんなに人なつっこい仔なのに。
考えれば考える程
暗くなってくる気持ちに
気分を変えようと
俯いた顔を信号の方にむけた。
信号はまだ赤。
車道側は青で左右から車がいったり来たり
してる。 今日も車が沢山通ってるな…と
ぼんやり眺めていたら、
自分の向かい側の信号に
見覚えのある姿があった。
あの朝にあった茶色い猫だ。
「あの仔だ…っ!」
猫と信号を交互にみながら
早く信号が変わってくれないかなと
願う。
そして1分後、
長い赤信号が青になり、
車が止まったのを見計らい
急いで猫がいた場所に行くが…
「あ!待って…」
いつ移動したのか、
猫は暗いビルとビルの間にするりと
入って行くのが見えた。