第1章 プロローグ
「そーか、そーか。ちゃんか‼︎」
……ちゃん?という名が本当に俺の名前かは確かではないが、女ではないことは確かだ
「あの、近藤さん?この子男の子ですよ?」
栗色のお姉さんの方が誤解を解いてくれた
「何⁉︎そうなのか⁉︎俺はてっきり女の子だと…スマン‼︎」
『…いえ……』
「くん、記憶が無いということは帰る家も分からないんじゃないのか?」
『…そう…なります……』
「だったら俺たちと一緒に暮らさないか⁉︎」
近藤さんという人がにっこり笑顔を見せた
この人の笑顔はなんだか温かい気持ちになる
「ちょっと待ってくれ、近藤さん‼︎俺は反対だぜ」
部屋の入り口あたりに背を預けこちらを伺っていた黒髪の青年が声をあげた
「何故だトシ⁉︎」
「なんでも何もこんな素性も知れねぇやつ信用するってぇのかよ⁉︎」
確かに彼の言う事はもっともだ
血だらけで倒れていておまけに記憶喪失だとか怪しすぎるだろう
「トシ、素性が知れねぇのは俺たちだって同じようなもんだろう」
「……チッ。たくっ」
黒髪の青年は、観念したという顔でそっぽ向いてしまった
「くん。今日から俺たちが君の家族だ。よろしくな」
俺はこの言葉とこの人たちの笑顔にどれほど救われただろうかーー