第80章 再生の道へ
「私は、死にません」
もう一度。
凛とした声ではっきりと告げる南に、リーバーの体の震えが一瞬止まる。
恐る恐る、というように、強く抱き締めていた腕の拘束を緩めて、こちらを伺ってくる。
やっと視界に映った彼の顔は、まだ少し不安げな色が残っていて、南はしかと薄いグレーの目を見つめ返した。
「死にません。どんなに怪我を負っても、絶対に死にませんから」
根拠なんて何もない言葉だった。
今回の本部襲撃での件も、南が命を取り留めたのは奇跡のようなものだ。
一歩間違えれば、タップのように塵と貸していたかもしれないし、マービンやハスキンのようにAKUMAに食われて命を落としていたかもしれない。
それでも一瞬も目を逸らすことなく、真っ直ぐに瞳と言葉で伝えてくる。
何度も死なないと繰り返しては、リーバーに伝わるように。
「だから一人で抱え込まないで下さい。私もちゃんと、生きて一緒に自分ができることをしていたい」
しかと大きな背中に手を添えたまま。
涙跡の残る顔で、南は笑った。
「死にませんよ、私は。これでも結構任務先でも死線潜ってきましたから。生命力は高い方です、きっと」
「……それ、胸張れることじゃないぞ、きっと」
「そうですか?」
緩んだ南の笑顔につられるように、リーバーの体から力が抜けて肩が下がる。
苦みは残るものの、不安げな顔に少しだけ宿る柔らかな表情。
それを目にほっとしながら、南は今度はしっかりと笑ってみせた。
「自信はありますよ」
「…そうか」
「はい」
緩んだ大きな腕は、未だに南の体に回されたまま。
近付いたリーバーの額が、こつりと南の額と重なり合った。