第80章 再生の道へ
「あの形のゴーレムは私見たことないですし。最新型か何かですか」
「あいつ…っまた勝手に起動してっ」
「?」
「ああいや、あれは科学班のゴーレムじゃないんだ。ジョニーが作った試作品で」
「ジョニーが?」
やれやれと頭を掻きながら歩み寄ってくるリーバーに、きょんと首を傾げて再び南はゴーレムを見上げた。
試作品となると、何か通信ゴーレムとは別の目的の為に作られたのだろうか。
(ヘッドホン型通信機といい、変わったもの作るからなぁ。ジョニーは)
そんな柔軟な考えを持っているからこそ、科学班での開発には大いに役にも立っているのだが。
「なんでジョニーの試作品がリーバー班長の部屋に?」
「前に見舞いに行った時に、その試作品をこっそり持ち出していてな。改良作業をしてたから没収したんだ」
「…仕事人間ですもんね」
「…南も人のこと言えないけどな」
「………」
(仰る通りです)
ぐうの音も出ないとはこのこと。
押し黙る南に苦笑しつつ、リーバーは再度ゴーレムを見上げた。
「まだ試作途中だからか、勝手に起動することも多くてな。箪笥の中にしまってたはずなのに…いつ出てきたんだか」
「へぇ…」
その時。
ぴょこんぴょこんと天井付近で飛び跳ねていたゴーレムが、その勢いのままちょこんっと書類の上に着地した。
と、勢い余ったのか。
高い書類の山がぐらりと揺れる。
(あ───)
ぱちりと南が目を瞬いたのと、傍にある書類の山がバランスを崩したのは同時だった。
ふっと顔にかかる書類の影。
「ッ…!」
ぶつかる、と危機を感じ取った体はすぐさま後方には退かなかった。
否、退けなかった。
松葉杖を使わないと歩けない体は、咄嗟に後ろに飛び退くことなどできなかったのだ。
唯一、ぎゅっと固く目だけを瞑った時。
「南ッ!」
南の耳にドサドサと落ちてくる書類の音と、リーバーの鋭い声が重なった。