第80章 再生の道へ
「ほらほら、二人は戻って体休めて。後でまたお見舞いに行くから」
「す、すみません室長…いつも」
「いいんだよ、当たり前のことをしてるだけだからね。当たり前のことを」
軽く南の両肩に手を置いて、その体を司令室のドアへとコムイが誘導する。
振り返り見上げてくる南ににっこりと笑みを返して、わざとらしいまでに強調して言ってやった。
目の前の彼女にではなく、後ろで黙り込んでいるリーバーに向けて。
子供ではないのだ。
自分の足で会いにも行ってないのに、都合良く南と会わせるなんて。
なんとなく気分が良くない。
しかと自分の足で向かうべきだ。
そこまで特別な感情を抱いているのなら、尚更。
(全く。手間のかかる部下だよ)
それはどっちの台詞だと、瞬時にリーバーの雷が落ちそうな呟きを内心抱えながら、コムイは溜息をついた。
これでも一応黒の教団で最高責任者という肩書きを持つ身。
人を見る目はそれなりに持っている。
それも長年連れ添ってきた右腕ともなる部下のことなら、色々とわかる。
彼の南を見る目は、他の部下達を見る目とは違う。
そこに抱えているのは特別な感情だ。
あの仕事一筋で浮いた話などそう見せなかったリーバーが、異性として南を見ている。
そのことに気付いた時、コムイは驚きもしたが純粋に嬉しさを感じた。
戦争を行っている職場だからと言って、色恋禁止なわけではない。
教団外の人物なら難しいかもしれないが、同じ職場なら願ったり叶ったりだ。
彼は大切な人を作るべきだと思う。
自分よりも他人を優先して生きることが、当たり前になっているリーバーだからこそ。
彼を想い支えようとする女性が傍にいてもいいと、コムイは常々思っていた。
それが南であるならば異論などない。
(でも今は味方してやれないけど)
だがしかし、これは別問題だ。