第15章 神隠し
「神隠しです」
「神隠し?」
「然様」
村人に聞いて、村長と呼ばれる人物に会った。
話をすれば割とまともな人間だった。
だけど。
「私らの村は、ご存知の通り森深くに存在します。他の村との交流もない。その為、物資も乏しく…昔の風習に村の繁栄を祈って、生贄を捧げる儀式がありました」
「生贄って、もしかして」
「然様、人間です。無駄に何人もの村人の命を、犠牲にしました。それ故に掛けられた村の呪いなのです。だから今も、神隠しとして連れていかれる」
「そう、ですか…」
なんつーか…どっか宗教的な村だな、此処。
行方不明が事故とは思わず、悪魔や神様の仕業だと信じ込んでいる。
そんな信仰の強い人間が集まった村なら、あんな奇怪な視線を感じても不思議じゃないのかもしれない。
「なので、黒の教団の方々にわざわざお越し頂いて申し訳ないですが…あまり長居されぬよう。貴方達まで神隠しにあっては、先祖に顔が立たない」
「あの…先にこちらへ来ていた、私と同じ探索部隊の者がいたと思うのですが。その者は…?」
「探索部隊?」
伺うように尋ねるトマに、村長は観察するようにその姿を頭から足先まで見る。
「いいえ。見ていませんな」
そして首を横に振った。
「余所者なら目立つのですぐわかります。その者はきっと、私らの目から隠れながら探索を行っていたのでしょう」
その可能性はあり得る。
外部との交流を嫌う村なら、ファインダーだけじゃ安易に踏み込めないかもしんねぇし。
オレ達がこの村に踏み込めたのは"ローズクロス"っていう教団の身分証があったから。
だとしたら、何処かで事故にでもあって連絡がつかないのか。
「捜してみましょう、トマさん」
「はい」
アレンの言葉にトマも頷く。
その横に立っていた南を、ふと見れば。
「………」
その視線は部屋の中じゃなく、外へと向いていた。
「どうしたんさ?」
「え?…いや、」
窓の外に向いた視線を戻しながら、南はどことなく不思議そうに呟いた。
「なんか、歌声が聞こえた気がして」