第74章 本部襲撃
───その日は、特に何もない普通の一日だった。
「ウォーカー、君はもっと野菜を摂取するべきだッ」
「リンクこそケーキばっかり食べてるじゃないですかっ」
「…お前ら二人共、充分重ぇよ」
「若いのう」
やっと教団の病棟から退院して、怖い婦長の目から解放されて早三日。
今日は丸一日書庫室にこもってて、晩飯時刻に食堂に顔を出せば大量の飯を運ぶアレンとホクロ二つの監査官を見かけた。
あまりのその量に、思わずジジイとツッコむ。
アレンの食べっぷりは知ってたけど、このホクロ二つも割と食べるんさなぁ。
……って持ってんの全部ケーキ類じゃね?
うえ…別に甘いの嫌いじゃねぇけど、晩飯がケーキって…胸焼けしそうさ。
「アレンお前、目の下また隈じゃんか。まだこのホクロ二つに質問攻めにされてるんさ?」
「ホク…ッ!?失礼だな君は!」
「ああ、そんなんじゃ駄目ですよリンク。ラビは子供だから、あだ名が好きなんです。嫌ならもっと強く言わないと」
「あははー。アレンお前さ、最近オレが年上っての忘れてねぇ?」
適当に注文した晩飯を手に、アレン達と同じ席に着く。
このリンクって監査官がアレンの監視に付くようになってから、どうもずっと質問攻めにあってるらしい。
"中央庁の番犬"って、その肩書きだけでしつこそうだもんなー。
〝中央庁〟
それはこの黒の教団と同じく、ヴァチカンが作り出した聖戦の為の組織の一つ。
教団のサポートをする他支部とは違い、厳格な規則に則って監視や監査を活動の主としている。
ってかやっぱりオレへの風当たり最近強くね?
アレンさん。
「そんなことありませんよ」
「ぜってぇ目線が上からになってますって」
…つーか、
「凹んでるかと思ったけど、案外ケロッとしてんじゃん」
中央庁の監視が付くなんて、明らかに不審人物として疑われてる証拠。
凹むかと思いきや、アレンはここ数日全く変わらなかった。