第73章 あくまが来た日
一瞬の出来事だった。
強い衝撃と風圧。
それは本当に一瞬だった。
「え」
お腹と口から血を流して倒れているジョニー。
その姿が視界に映る。
何故か遠くに。
真上から見下ろしているような高い角度で。
「……ぁ…?」
痺れるような熱く鈍い痛み。
「ハァアァア…」
すぐ真横にある、剥き出しの歯が息を漏らしながらカタカタと鳴って嗤う。
何、これ。
視線を横に移す。
人の形を象った黒い機械のようなその生き物は、私の体を宙高くに持ち上げていた。
羽も何もないのに、その場に浮いて。
その黒い腕は鋭利な形で、私のお腹に刺さって──……
お腹に、刺さる?
「っげほ…ッ!」
口の中に一気に広がる鉄の味。
ごぽっと零れたそれは、目の前のその機械にかかって赤い液体が付着した。
…あ。
これ……私の───……血、だ。