第9章 衝動
何、これ。
「ラ…ラビ…?」
見えたのはブックマンとラビ専用の二階建ベッドの天井と、その天井をバックにした赤髪の青年の顔。
一瞬何が起きたのか、わからなかった。
手首を引かれたから、顔からベッドに衝突するはずだったのに…多分ラビが上手く受け流して、背中から倒れるよう体制を変えたんだ。
受け流された体は呆気なくベッドに沈んだから、痛みなんて全くなかった。
流石エクソシスト、伊達に体術の稽古もしてないみたい。
ブックマンは体術のスペシャリストだし、色々教え込まれたんだろうなぁ…。
………。
いやいや、悠長に感心してる場合じゃないから私。
「何、急に…退い、て」
「やだ」
起き上がろうとすれば手首と肩を押さえられて、体はビクともしなかった。
え、何。
なんなのこれ。
なんでラビに押し倒されてるの、私。
顔とか色々近いんだけど。
「他の女なんてどうでもいいさ。南がオレを男として見てくれるなら」
「み…見てるよ。見てます見てますっ」
軽くパニックになりそうになる頭を必死に整理して、コクコクと頷いて賛同する。
その反応が気に入らなかったのか、ラビの表情がむっとしたものに変わった。
子供みたいに拗ねた顔じゃなくて、難しい本を解読している時のような真剣な顔。
「南が悪いんだからな…そうやって、茶化すから」
顔にラビの影がかかる。
あ。
これはなんだかまずい気がする。
そう直感すると同時に。
「待っ───…んっ」
口を塞がれた。
彼の、その唇で。