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科学班の恋【D.Gray-man】

第82章 誰が為に鐘は鳴る



ゾンビ達に呑み込まれ消えてしまった南とラビ。
諦めの溜息を少女がついた、ものの数秒後だった。

カッと強い光が一瞬ゾンビの群がる隙間から放たれたかと思えば、衝撃波のようなものが噴き出したのは。



「ギャァアア!」

「グルァア!」



一斉に吹き飛ばされたゾンビ達が、廊下の壁に激突して悲鳴を上げる。



「……え?」

「な、なんさ…?」



吹き飛ばされたのはゾンビ達だけらしく、その中心にいた南とラビは己を庇う体制のまま、無傷で残されていた。
恐る恐る顔を上げ、困惑した目で辺りを伺う二人。
どうやらラビがイノセンスでゾンビ達を弾き飛ばした訳ではないらしい。



キィイン…



微かな"呼吸音"は、南の背中に在った。



「まさか…六幻?」

「え?六幻?六幻が何?」

「勝手に発動したんかも……流石、ユウのイノセンス」

「ええっ!?そんなことあるの!?」

「適合者が近くにいればそういうこともあるけど、ユウでも近くにいんのかな…」

「え"」



背負っていた六幻の袋を慌てて握り締める南は何も感じ得はしなかったが、エクソシストであるラビは異変を感じ取っていたらしい。
まじまじと興味ある目で六幻を見るラビに、やはりゾンビ達を吹き飛ばした原因はそこにあるのか。



「それか、南がユウの次に六幻と長く向き合ってるから、動いてくれたんかもな。イノセンスは意志ある物資だから」

「それは、そうかもしれないけど…でも、ないでしょ。私、一般人なのに」

「エクソシストも南達と同じ人間さ。南だってそう言ってたろ」

「それは…そう、だけど…」



ラビの言うことには一理あったが、南の返事は歯切れが悪い。

本当にそんなことなどあり得るのか。
まじまじと困惑気味に、腕の中の六幻を見下ろす。
黒光りのする綺麗な鞘に収まる、ずしりと重いイノセンスの刃。



「っ…?」



それがぐにゃりと、不意に歪んだ。

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