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科学班の恋【D.Gray-man】

第81章 そして誰もいなくなった



「あの戦闘民族に捕まるなんて、不運な子だ」



激しいアレンとソカロの攻防を、一人淡々と冷静に見ているのはティエドール。
否、ゾンビ化した彼ら元帥と、新たなゾンビ仲間となってしまったリンクとブックマンだった。



「さて…君達も覚悟してもらうよ」

「一緒に逝こう…」

「グルルル…」

「ガァアッ」



淡々と話しかけてくるのは元帥であるティエドールとクラウドのみ。
リンクとブックマンからは唸り声が上がるだけだ。
ゾンビ化しても尚、理性を保っていられるのは元帥程の器の持ち主だからか。
しかしその理性が逆に厄介なものとなっているようだった。

頭が回る分、ただのゾンビ化人間より手強い相手である。



「くそッ!どうしたら…!」

「おい!椎名!」

「え?何っ?」



頭を抱えるリーバーの隣。
避難するように待機していた神田が、不意に南の元へと駆けてきた。



「六幻の修理はもう終わってんだろ!返せ!」

「あ、六幻?終わってる、けど」

「"けど"?」

「その…まだ検査書ができてなくて。六幻は研究室の保管室に置いたまま…というか…」

「はぁッ!?またそれかよ!検査書くらい修理完了と同時に終わらせろ愚図が!」

「う…す、すみません…」

「そう当たるなさユウっ南は退院してからずっと、ユウの六幻につきっきりで修理してたんだかんな!ずーっと!オレの鉄槌はほっぽってさッ!」

「テメェのはただの八つ当たりだろ!口挟むな馬鹿兎!」

「ら、ラビの鉄槌も修理は終わってるよっ」

「あ?」

「え!マジさ!?」

「うん。……検査書まだだから扱えないけど」

「って同じかよぉお!」

「なら言うんじゃねぇよ阿呆!」

「痛いッ!」



悲鳴を上げるラビの横で、勢い余って小柄な体を跳ねた神田が、南の頭をパシン!と小気味良い音を立てて叩く。
絶体絶命の状況に、誰もが余裕を失くしているようだった。

装備型エクソシストは、武器である装備型イノセンスがなければただの人。
ましてや科学班の薬で幼児化した二人に、即戦力は望めないらしい。

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