第2章 いずれ僕らに追い付くサヨナラ (ディグレ)ラビ夢
夜明けの空がまぶしい。痛々しいほどに指す朝日が目にしみる。強く風が吹いているせいでもあるかもしれない。
秋良はゆっくりと目を閉じて、激しい戦いが終わったことを実感した。
そして体をこれでもかと伸ばして地面に倒れこむ。固くて痛い。なぜならそれは今の今まで戦ってきた敵の残骸だからだ。でも、構わないと秋良は思っていた。
こんなに美しい日が昇ってきているのだ。断罪したAKUMAたちも許してくれるだろう。
太陽は赤とオレンジが混ざったなんとも言い難い色をしている。それが見れたことが秋良にとって誇りでもあり、生きている証のような気がする。
わかっている。自分は感傷に浸っているのだ。AKUMAに対して憐れんでいるのではなく、秋良自身にだ。
あと何回こんな美しいものが見れるのだろう。傷を増やしながら進んでいく私たちは歩いていく中で、何人倒れてしまうのだろう。
それが怖い。たまらなく怖い。
だから、つかの間の休息といえる今を噛みしめているのだ。
ザク、ザクとAKUMAの残骸を上ってくる少年がいる。少年は秋良と目が合うとにっこりと笑って手を振った。
秋良は起き上る。
「秋良」
「なーに? うさぎちゃん」
うさぎちゃんと呼ばれた赤毛のエクソシストは顔をしかめる。
「うさぎちゃん言うのやめろ」
「ごめんごめん、なに? ラビ」
ラビと呼ばれた少年は肩をすくめて手に持っている書類を振る。
「オレたちまた一緒の任務だってさ、次はもっと南」
その言葉に秋良は明らかに声のトーンが落ちる。
「えーまたうさぎちゃんと一緒かぁー」
「うさぎちゃんっていうなさ!」
いちいち反応してくれるラビがおもしろくて、秋良はクスリと笑う。
彼はブックマンの跡取りのはずなのにどこかまだ子供っぽい。毎日ブックマンから激が飛ぶのもそのせいだろうか。でも、と秋良は考えて、つぶやく。
「……でも正直私は誰とでも、どこでもいいわ」
「ん? なになに? 悩み事?」
目ざとく聞いていたのかラビの表情が変わる。好奇心いっぱいの瞳でこちらを見て来るので内心疲れる。秋良は吐き捨てるように言葉を投げた。
「どっちにしろ、私たちはどこかで死ぬってこと」
その言葉を聞いて一気にラビの表情はくもる。やはりブックマンには向いていないと秋良は苦笑いをする。
