第14章 赤い夫とのご挨拶
『着いた…………』
私は高い高いビルを見上げて言った。
「緊張しない」
征十郎は私の背中を少し強めに叩いた。
『痛っ!』
私は背中をさすって征十郎を睨みながら言った。
「緊張しているときはこれが一番だ」
『……………あっそ』
「ほら。入るぞ」
『うん…………』
私は両手を頬に持っていってバシッと叩いた。
『よし!行こう』
私たちは中へと足を進めた。
中に入るとゆったりとした曲調の音楽が流れていた。
〈おー!征十郎!久しぶりだな!!〉
〈ああ。久しぶりだね。ロバート〉
ロバートと呼ばれた男の人が笑顔で近づいてきた。
〈元気だったか?お!横にいるのはお前の嫁さんか?〉
《初めまして。征十郎の妻の美桜です。よろしくお願いします》
〈お噂はかねがね聞いてるぜ!なあ。英語喋れんのか?〉
《はい。征十郎の通訳兼秘書です。といっても征十郎には通訳は必要ないと思いますけどね》
なんの噂かとても気になった。
〈アハハハ!まったくだな!まあ楽しんでいけよ!上でお父様が待ってるぜ〉
〈そうだな。じゃあまた後で連絡するよ〉
〈おう!あ!いい忘れてたことがあるんだけどよ。この数日間、俺がお前らに付くからな!安心しろ!!〉
ロバートは親指をたててウインクをした。
〈ああ。よろしく頼むよ〉
私は征十郎に続いて頭を下げた。
「美桜行こうか。父さんのところへ」