第20章 ➕コーダ
「次は岩ちゃん歌いなよ」
間奏部分でふぅと息を吐きながら及川が云う。
「ああ」
岩泉がタブレットを引き寄せて曲を選ぶ。
キーをぐっと下げているから女性ボーカルの曲なのだろうか。
「はい、岩ちゃん」
歌い終わった及川からマイクが回ってくる。
曲の予約画面になり、曲が始まった。
――恋しくて、切なくて、止まらない。
せめてこの想いは君の元へ。
そんな歌い出し。
側にいて親友だけど、彼女にはなれない女の子の歌。
――云いたくて!
云えなくて…
恋しくて
愛しくて
今も…あの日のまま
歌い終わると、岩泉は澤木の隣に戻ってくる。
「解るな?」
「はい」
一言、交わす。