第20章 ➕コーダ
「で、岩ちゃん、転勤てどういうコト?」
及川が『濃い』とキールロワイヤルの氷を混ぜながら云う。
「しばらくは本社勤務の予定だったんだが、支店で女関係で下手こいて島流しになった奴がいるから、代わりに本配属されることになった」
云い、アブサンを飲む。
「いつ?」
「3日後」
澤木がぎゅっと眉を寄せた。
ピーチハイに浮いた果肉が凍っていて飲みにくいと彼女はそれを口にしていない。
「もっと早くに云ってくれたらいいのにさ」
及川はマドラーでステアしながら云う。
「何か云いづらくてな」
多分3人で過ごす毎日が楽しかったから。
それが無くなる現実を認めたくなかったのだ。