第19章 ➕いんせくと
「岩泉しゃん…入れてぇ」
蕩けた声でお願いしたけれど、焦らすみたいに指はふちをなぞるだけだ。
「俺が何が好きか知ってるだろ?」
云われて、自然と口角が上がった。
悲しい事を思い出す。
うーん、徹さんが女の人と朝帰りした時、マスカラの痕がシャツの襟に付いていた時、甘い女の子の香水のかおりに家のと違うボディーソープの匂い、――サーブが決まらなかった時。
ポロ、と最初の一粒がこぼれればダムが決壊する様に私の目は涙をたたえあふれさせる。
「ああ、澤木…」
愛しさのこもった手が私の頭を、体を撫でる。
真剣で色欲に染まった瞳。
真に漆器の様になめらかな黒い眼。