第16章 【番外編】➕てぃあー
本当に、及川は趣味が良い。
彼女が及川を捨てる事は無いだろう。
未来永劫。
だから、俺は今こうしていられる。
頭から手を滑らせ耳殻をくすぐると、彼女は体をよじった。
「岩泉さん、くすぐったい」
短かった彼女の髪は今はもう肩につく位になった。
今日は高く結い上げられ、毛先が綺麗に縦に巻かれている。
耳から首筋へ。そして毛先へ。
「これ、及川さんがやってくれたんですよ。…昔から時間が有るときはやってくれるんです」
寂しそうな笑顔。
嗚呼、泣かせたい。
体中の水分を絞り出すように泣かせたい。