第16章 【番外編】➕てぃあー
揚げ物と漬物の並んだテーブルには彼女が飲み干したジョッキが放置されている。
自らが云う通り、周りの早い彼女は既に酩酊していた。
遂にピッチャーに口をつける彼女の話を黙って聞いてやる。
子供のように無邪気な目をした彼女が及川に失心し、うらみつらみに爛れるのはひどく愛らしい。
最初に会った時の胡乱な目が思い出されて胸が高鳴る。
あの暗い目が今は嫉妬に燃え、自分を映す。
「澤木、いつでもあいつを捨てていいぞ?」
頭を撫でると、顔がほころぶ。
及川が好きで堪まらなくて辛いという眼も、この無垢な笑顔もどちらも装いではないのだ。