第10章 読書(?)
大学の図書室。
静かなその空間で読む大好きな作家さんの本。
今日はその隣に少々騒がしい客人がやって来た。
「よぉ」
「…あれ、宮地ってメガネ掛けてたっけ」
「最近ちょっとな」
「みゆみゆの見過ぎなんじゃない」
「そりゃ無えよ。むしろ癒されてるから」
宮地清志。
大学で初めて話した割に、何故か仲良くなっていた。
高校ではバスケ部の強豪校のレギュラーだったらしいが、まるでそんな風には見えないほどのアイドルオタクだ。
「レポート面倒くせぇ…」
「うるさい」
「書き方わかんねえんだよ」
「私の見る?」
小説を読む隣で宮地は課題のレポートを始める。
別にいいんだけど、静かにしてほしい。
というか、なんで隣に来たんだろう。
「…めっちゃわかりやすいな」
「でしょ」
「うわ、ドヤ顔ムカつく」
おかげで中々物語が進まない。
だけど、鬱陶しいとまでは思えない。
それはきっと、ただのうるさい奴ではないとなんとなくわかったから。
それに、一度大学に遊びに来てた後輩との様子を見た限りだと、むしろ慕われているようだった。
確かそれからだ。私の中で宮地の印象が変わったのは。
「って小説とか読むんだな」
「結構好きだよ」
「ふーん…。オススメ貸して」
「え、読むの?」
「読むから借りるんだろーが、轢…あー、まぁほら、論文の参考になるかもしんねーだろ」
「…そっか。じゃあ今度持って来るね」
「おう」
時々宮地は物騒な言葉を言う。
最近は気をつけているのか、詰まるくらいにはなってきたけれど。
「あ、今度みゆみゆのソロCD出るから買えよ」
「いや、いらないから」
「チッ」
「もう黙って」
小説の青春風景とは全く違うし、秋らしいことも何も無いけど、何気無いこんな日常も悪くないと私は思う。