【ハイキュー】ひとなつの (poco a poco2)
第2章 菅原の憂鬱
一週間の東京遠征合宿を控えて、
練習前の体育館ではある打ち合わせが行われていた。
「やっぱり、ここは僕がやるしか……」
「いやいや、武田先生にそこまでしてもらうのはさすがに……。」
「そうですよ。先生は他にもやることがたくさんあるんですから。」
「さすがに一週間ってなると町内会のやつらも連れ出せねえしな。」
顧問武田、主将澤村、副主将菅原、鵜飼コーチ、の4人が顔を突き合わせて悩む。
「やっぱり清水と谷地に交代で頼むしかないかな。」
「でもあの二人もそういうの得意かどうか分からないし、そもそもそんなに手が空くかどうかも分からないべ。」
そこへ意外な人物が顔をだした。
「こんにちはー。こうちゃんの忘れもの届けに来たんですけど……。」
立花の姿を見ると、菅原が立ち上がって駆け寄る。
「おー、ありがとな。うっかりしちゃって。助かったよ。」
「いいよいいよ。私これから図書館に勉強しに行くところだったし。」
持ってきたサポーターを渡しながら、
立花は勉強道具の入ったカバンを見せた。
「みーもすっかり受験生だな。」
その時、何か閃いた様子の鵜飼がそろそろと近づいてきて声をかけた
「えー、立花くん?立花くんは、もしかして機械とか、得意かな?
っていうか好きかな?いやいや、今は好きじゃなくてもいい。
せめて来週一週間だけ好きになってくれないかな?」
「え?」
ただならぬ気配に、立花は後ずさる。
「コーチ、こいつは、そういうのはちょっと……。」
菅原が間に入ろうとすると、後ろから澤村が邪魔をした。
「そうだ、立花は、パソコンとかよく触ってるよな?
写真とか、ビデオとかも使ったことあるだろ?」
澤村の明らかに裏のありそうな笑顔に立花はますます怯える。
「え……と。
ネットはするけど写真はデジカメくらいしか……。
なに?何の話?」
菅原に助けを求める。
菅原は不安そうに何か言おうとしたが、武田先生の声に遮られてしまった。
「まあまあ、そんないきなりじゃ立花さんも困りますよ。順を追って説明しましょう。」
その言葉に全員が頷く。
しかし澤村だけはがっしりと立花の肩をつかんで離さない。
まるで「逃がさない」とでも言っているかのように。