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獄都二居座ル狐ノ子

第2章 壱


「おかわり!!!!!」決まって最初に飯粒一つ残っていない皿をキリカさんに差し出すのは谷裂だ。「おばちゃん、俺もっ!!!!」そして次に皿を差し出すのは平腹。次に来るのは斬島だ。
熱々のカレーを舌を火傷しないように口に運ぶ。熱さに人一倍弱い舌を持っている為、思わず肩を震わせてしまった。だが、やはりキリカさんのご飯は美味しい。愛情というものが入っているのだろう。

そこで一つ、疑問が頭をつついた。疑問というより、違和感の方が近いか。
いつまでたっても斬島の声が聞こえないのだ。
斬島は私の右隣にいる。左隣にいる田噛はもう既にカレーを食べ終わっており、うつらうつらの船を漕ぎ始めていた。斬島の声は聞こえやすい筈なのだが。
横目で少し斬島を見る。いつも通りの無表情でカレーを口に運んでいるが、何処か元気がなさそうに見える。
「…斬島さん?元気がなさそうですね、どうされたのですか?」
口の中のものを飲み込み、問いかけると相手は驚いたように目を少し見開いた。
そして手元に視線を移し、ぽつりぽつりと語り始めた。
「いや。…木舌が、気にかかってしまってな。」
その言葉にはっとする。
確かに、木舌は私と同じ時間に仕事に出た筈だ。いつも酒を飲んでは谷裂に運ばれを繰り返している彼だが、戦力は獄卒内でも高いほうだ。仕事はとっくに片付けて、食堂で共に昼食を取っている筈なのだが。
「…あ、そのせいで心配をかけてしまったのなら、すまなかった。ありがとう」
ぺこりとこちらに向かって頭を下げると、「キリカさん、おかわり貰えますか」と皿を差し出した。いつもの調子を取り戻したようで、内心少し安心した。




「ごちそうさまでした!!!!!!」
「ごちそうさまでした!!!!!!!!!!!」
肋角が全体に聞こえるように声をはって、挨拶をした。そしてその倍以上の声が帰ってくる。
あとは各自、非番のものは図書室や個人の部屋へ。仕事が入っている者はそのまま屋敷の出入り口へ向かった。
「狐織」
後ろから聞こえたのは谷裂の声だ。確か今日は私との鍛錬があったが、その話だろうか。
「はい、鍛錬の話ですか?」
「……ああ、そうだ。」
少し驚いたように目を見開いた。どうやら図星のようだ。
「鍛錬開始の時間は二時半からだ。今度こそお前に勝つ。」
そう宣言してから、さっさと食堂の出口へ向かった。
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