第2章 壱
草木も眠る丑三つ時。
私と亡者は、現世で不慮な事故がつづくある山奥いた。
亡者はすでに罪を何回も重ねていた為今は姿が歪みつつあった。
その当の亡者は文字で表現できないほどの唸り声を上げ、未だに私に抵抗し続けていた。
「…いい加減諦めなさい。」
長い鞘に収めていた小太刀二振りを抜き、話を続ける。
「確かに山で自らの死体を埋められ、その上白骨死体で発見され葬儀もろくにされなかった貴方の人生には同情していました。
けれど恨みを通り越して、貴方は殺し自体を楽しんでいる。もはや貴方にかける慈悲はありません。」
すると、亡者は唸り声を止めた。そして不気味に笑みを浮かべ始めた。
『なンデ…ダよぉ…?オれ、かワ』
その刹那の瞬間。斬撃と共に亡者は肉片のみとなった。
その血が、地面に、服に、私自身に降りかかった。
刀にこびりついた血を振り払い、長い鞘の左右に二振りを収めた。
この亡者は、直に閻魔庁の者が連れに来る。
そこで一つ、自然にため息が出た。
最近の現世はどれだけ残酷なのだ。
先程の亡者のように、恨みに身を任せ、生者を呪い殺す奴等が増えている。しまいには恨みを通り越して殺しを楽しむようになり、その亡者に関わったものだけでなく、何も関係ない生者達が殺されるのだ。
なんとなく重い何かを背負ったまま、私は本拠地である屋敷がある地獄に戻ることにした。
*
丑三つ時。すなわち亡者が現れやすい時間帯だ。先程の仕事のように、丑三つ時であった過去に戻らなければ遭遇できない亡者を捕まえろという任務が入った場合、閻魔庁に身を置く閻魔大王によって過去に戻り、亡者を取り締まる。今行ってきた過去の現世は午前二時。そして今戻ってきた地獄の時間は午後十二時を過ぎたところだ。
地獄の時間と現世の時間はリンクしている。
つまり、今は現世も地獄と同じ時間だということだ。
突然目に入ってきた強い光に少し顔を歪めた。
此所は地獄の首都・獄都。多種多様な魑魅魍魎や妖怪が数多く住んでいる。そして此処には私達獄卒の本拠地がある。
獄卒は基本男性しかいない。まあ無理もないだろう。獄卒は平たく言えば力仕事だ。その力仕事を自らやろうとする鬼女は少ないだろう。
私は、獄卒という亡者を取り締まる機関を提案した私達の父親のような存在・肋角さんに拾われた一人目の獄卒だ。