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獄都二居座ル狐ノ子

第10章 七


まさかと思って隣の掃除用具入れを開けてみた。すると、
「わっ…」
「ふぉ?おおおおそう!!!!こいつ!!!!うおあああ待ちやがれ黒饅頭!!!!!」
勢いよく飛び出してきた怪談は私の頭を踏み台にして廊下へ逃げていった。それを平腹が追いかける。
「…ん?」
一つ頭に突っかかった。
平腹の武器はスコップだ。その一つだけ。確か平腹はもう一つ持っていた。
「……あっ」
ツルハシ。
そうだ、平腹はツルハシも持っていた。その武器は田噛のだ。平腹は田噛のツルハシを取ってそれでそれを怪談に盗られて…
また話がややこしくなってきた。
兎も角今は平腹さんを追いかけよう。勿論手当り次第になってしまうが。
「おい、」
「えっ」
教室の横引きの扉を開けると、そこには田噛がいた。怪訝そうな顔をして「何だよ?」と首を傾げ問い掛けてきたので、「すみません、驚いてしまって…」と思わず目をそらしながら返した。
「そうかよ。…で、玄関前の方に平腹がツルハシ持った怪談追っかけてったのを見たんだが……」
顎で玄関前を指しながら言った。
正直今の状態で田噛と遭遇したくなかった。絶対に怒ってる。私に大してじゃないが、自分より何十センチも高いヒトが怒っていると相当迫力がある。
何となく察した田噛は、何故か罰が悪そうに後頭部を掻きながら言った。
「あー…、まぁお前を責めても意味無い…し。悪かったな」
「えっ、あ、いえ!大丈夫です、こちらこそすみません。」
「お前は謝らなくていい。…アイツに謝らせる」
平腹が走っていった方を睨んでそう言った。てっきりそのまま向かうのだと思ったが、「あぁ、それと」と歩みを止め、こちらへ視線を向けた。
「アイツ殴っていいよな?」
その振れない問いかけに少し苦笑いしながら、短く返した。
「…程々にですよ?」
「ん」
返しを聞いて少し満足げに、廊下を走って行った。

言わずもがな、その後校舎一階には平腹の悲鳴と殴った時に出る鈍い音が鳴り響いた。




「あの子が、肋角が連れてきた獄卒候補の子?」
災藤が素振りをしているまだ四、五歳くらいの幼子を見て言った。
「あぁ、そうだ。」
「でも細すぎないかい?大丈夫かな」
心配そうに呟く相手に対して、素直に事実を言った。
「細いには細いがな、見込みがある。容赦なくすると決めた相手には本当に容赦なく斬りかかるぞ。」
あ、それなら…と苦笑いで言った。
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