第4章 弐
「いい加減わかっただろう。」
なんとか開けた目に、私に向かって言う谷裂さんの姿がうつる。
「手加減なんてするな!!殺す気でかかってこい。相手になってやる!!!!」
得意気に金棒を向ける谷裂さんに、昔の姿をあてた。
昔、手合わせをした谷裂さんと今の谷裂さんは別人。
このままでは私は負ける。
「…すみません。私は貴方をなめすぎていたそうですね。」
手に収まっていた小太刀を握り直し、わずかに笑みを浮かべながら言った。
「殺す気で行きます。」
*
狐織はその場からゆっくり立ち上がった。流石は地獄の鬼、獄卒だ。傷口は塞ぎかかっている。
先程は呆気なく殴り飛ばされたが、今から奴は殺す気で行くと言った。共に任務へ行くことは少ないが、殺す気になった狐織は絶対に強い。そう確信していた。
「では行くぞ!!」
…そう言ったつもりだった。
鍛練場の端まで飛ばしていた筈の狐織に腹を切り裂かれた。言葉は続かなく、大量の血が溢れでる。相当深い切り傷だ。
彼女の攻撃はまだ続いた。
左手に持っている刀の刃を脇腹へ向けて刺し、それをそのまま引き裂いた。それと同時に、右手に持っている刀で利き手を刺してそれも同じように引き裂く。
それに尋常じゃない速さだ。流石と言ったところか。
次の攻撃に移られる前にやり返さなくては。
ボロボロになった右腕とは逆の左腕を動かし金棒を振る。
だが、それも回避された。
金棒は踏み台のようにされ、高く飛んだ。そして足が天井に向いたとき、天井を蹴り、刀を二振り構えた。
どうやら俺の方も、奴を侮っていたらしい。
刹那の瞬間、斬撃が四方八方から向かってくる。
その時。
灰白色の髪の男が現れ、俺を後ろに押した。
それでも斬撃は容赦なく振りかかった。
驚いたのは俺だけではない。ようやく我に返った狐織も驚いていた。それも無理はない。
「全く、容赦ないんだから狐織ちゃんは。」
文字通り八つ裂きにされても、困ったように笑みを浮かべている。
肋角の補佐官及び特務室副長・災藤だ。