第4章 弐
物音一つしない、静かな和室で過ごしていた。
聞こえるのは自分の呼吸と心臓の音だけ。外では、やけに五月蝿く聞こえる蝉の鳴き声と子供の遊び声でいっぱいだ。
心は、いつも冷たい石を放り込まれたように重く、冷めていた。
それを庇うように膝を抱え込む。
寂しいよ
ここから出して
助けてください
神様
*
二時三十分。
鍛練場の時計はその時刻を指していた。
鍛練場には既に谷裂が来ており、片腕だけの腕立て伏せを行っていた。
「すみません。待たせてしまいましたか?」
そう声をかけると顔をあげ、腕を止めた。そして立ち上がり、「ああ、問題ない。」と答えた。食堂から直接鍛練場へ向かったのだろう。
毎日訓練を行っているから当然といえば当然だが、谷裂は獄卒のなかでも特にガタイがいい。それに攻撃の繰り出し方も素早い。
「それでは鍛錬を始めるぞ。」
そんなことを考えていたら、早速谷裂が話を進めてきた。
「最初の時間は三十分。その後五分から十分ほど休憩をとったらまた鍛錬を始める。それでいいな?」
「はい、問題ありません。」
金棒をこちらへ向けた谷裂に続け、私も小太刀を鞘から取り出し、構える。
「…では行くぞ。」
静かにそう宣言すると、素早くこちらへ攻撃しにかかってきた。予想を上回る速さかも知れない。
向かってきた金棒を足で蹴り回避し、こちらも攻撃に移る。
右の小太刀でまず腹を狙う。利き腕を狙うにも相手の怯みが必要だ。谷裂は引き裂いても怯まないのではないかと思ってしまう。
だが行動するしないだと結果が違う。相手の様子を見ながら、刺す。
「大人しく刺されるとでも思ったか?」
…その声に一瞬血の気が引いた。
谷裂はこの事をもう既に読んでいたらしい。
そう気づいたときには腹には激痛が走っており、口には血の味が広がった。
鍛練場の壁は厚く、そして硬い。が、私がもたれた壁はピシッとひびが入る音がした。