第65章 体温
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気が付けば、1月も中旬になっていた。
久しぶりに、秀星くんもまとまった時間が取れたようで、久し振りに秀星くんのお部屋にお邪魔できることになった。
久しぶりの、秀星くんとの時間。通話でも、文字のやり取りでもない、同じ空間で過ごす時間。
まるで、このお部屋が、世界から切り取られているような錯覚さえ覚えてしまうほどに、私の心は喜びに震えていた。秀星くんの腕の中で、私はそっと目を閉じてみた。
気が付けば、このお部屋にも、随分と足を運ばせてもらった。このお部屋で、秀星くんとたくさんの時間を過ごしたと思う。軽く思い返すだけで、ずっと前に起こったように思える出来事が、昨日のことのように思い返される。……あぁ、でも、これ以上考えるのは、勿体無い。折角、秀星くんとこうして抱き合っていられるだから。今は、秀星くんの熱を感じていよう。
「ん……。」
「何、悠里ちゃん……?」
秀星くんの掠れた声。
「ううん……。何でもない……。もうちょっと、このままで……。」
「いいよ……。」
――――――最近、私はおかしい。理由もよく分からないのに、不安になるのだ。秀星くんと思うように会えないから不満なのか、別の理由があるのかも、自分ではよく分からない。
それでも何でも、こうして秀星くんと温度を分け合えているのだから、この時間を大切にしよう。
ふいに、秀星くんと目が合った。お互い、言葉はなかった。秀星くんの瞳から、その感情は読み取れない。私たちは、ただひたすらに、体温を共有し続けた。