第65章 体温
年が変わった。
今年のクリスマスはどうしようかな~、なんて、何となく考えていたが、計画倒れになってしまった。クリスマスに会う約束はしていたのだが、クリスマス前から大きな事件が続き、クリスマス前日には、あの狡噛さんが大怪我をするという事件が起こったらしい。聞くところによれば、狡噛さんはひどく負傷したらしい。それにしても、あの狡噛さんが大怪我を負うなんて、にわかには信じがたい話だった。訓練用のドローンを散々スクラップにした、あの狡噛さんをそこまで追い込むなんて、一体何が起こったのだろう……。私が考えても分かるはずもなく、不安しか感じないので、このぐらいにしておいて、これ以上考えるのはやめておく。とにかく、この年末年始、公安局は休む間もないぐらいだったようだ。
クリスマスに、秀星くんと楽しく過ごせるかな、なんて浮かれていた自分が、恨めしくなった。クリスマスは会えそうにないという連絡を貰ったとき、秀星くんには、気を遣わせてしまってごめんなさい、と素直に謝った。すると秀星くんは、「『健康な市民』は、それでいいんだって!」と、明るい声を聞かせてくれた。秀星くんは働き詰めのはずなのに、ひどく申し訳なく思った。ついでに、自分の無力さを痛感した。
結局、年末年始は全く会えないままに終わってしまった。