第64章 幸福論
「何?」
きょとんとした瞳で私を見る秀星くん。相変わらず、こういうふとした時の表情は、幼くて可愛い。
「1日早いけど、誕生日プレゼント。どうぞ。」
秀星くんは、ラッピングを見た瞬間、目を輝かせた。
「わー!!くれんの!?ありがとう、悠里ちゃん!!」
「わっ!?」
プレゼントの包みごと、抱きしめられた。
「開けていー?」
秀星くんは、キラキラとした目で、ラッピングをほどいた。
「ベルト……?」
「うん。」
相変わらず、プレゼントは何がいいか分からなかったけど、ベルトにしてみた。
「嬉しいけど、なんで……?」
秀星くんが、不思議そうに理由を尋ねてきた。首をかしげているところとか、仕草がもはや小動物だ。
「これなら、仕事中でも、身に着けられるかなー、とか……。」
私が選んだのは、本革の、ちょっとオシャレなやつ。ただ、男性用のベルトなんて、何を基準にどう選んでいいかも分からなかったので、ネットのレビューなんかも参考にして、ユーザー評価の高いものを選んだ。ちょっといいお値段したわけだけど、普段秀星くんに「料理」をご馳走になっているので、これぐらいのお礼はしたかった。
「~~~!悠里ちゃん、カワイイ!超カワイイ!!」
言いながら、秀星くんはまた私を抱きしめた。
「ね。もいっこ、いい?」
「うん。」
いいよ。秀星くんなら、何だって。
ふわっと重ねられた唇。ほんのりとした秀星くんの体温と、優しい匂い。私はしばらく、秀星くんを感じていた。
「あー……、やっぱ、無理……。」
唇を離して、開口一番に呟いた秀星くんの顔は、紅く染まっていた。
「ねぇ、軽くメシ食ったら、さ……。」
「うん……、いいよ……。」
甘くて優しい時間。温かな秀星くんの体温。秀星くんの鼓動。秀星くんといると思うのだ。人を好きになるって、こんなにも深く、切ないんだって。こんなにも、幸せなんだって。朝、目を覚ましても、秀星くんが隣で居てくれる。それを想うだけで、涙が出る。ずっと、こうして、体温を分け合っていたい。心から、そう思える。ずっと、これからも……