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シャングリラ  【サイコパスR18】

第62章 暗転 後編


***

「……、ちゃん。――――――ちゃん、悠里ちゃん。」
 ぼんやりとした意識。聞こえてくる、私の大好きな声。
「……しゅーせい、くん……?」
「アタリ……っていうか、それ以外だったらちょっとしたホラーだよね。」
 言いながら、秀星くんはふっと笑った。
「あ……、おかえり……?」
「……、あ、うん?うん……。」
 秀星くんは、なぜか少し面食らったような顔をしている。
「……?どしたの?」
 私も、寝起きなせいか、いつもより頭が回っていない。
「ううん。何でも。ただ、ココ俺の部屋なのに、『おかえり』なんて言われるのが、不思議だっただけだよ。」
「ん……。言われてみれば、そうだよね……。うん……。」
 私はまだまだ、意識がぼんやりしている。ただ、秀星くんが帰ってきてくれたことが、うれしくて仕方ない。寝惚けた意識の中でも、感じる幸福感。眠い目をこすって顔を上げれば、秀星くんがふんわりと笑っていた。そう言えば、掛けた覚えのないブランケットが、私の体に掛かっている。
「あ、これ、ありがとう。あったかい……。」
「帰ってきたら、悠里ちゃんがソファーで寝てたから、ビックリしたよ。俺はシャワーも浴び終わったし、もっかい一緒に寝る?」
「ん……。」
 秀星くんに手を引かれて、もう一度寝室へ向かう。私の手に優しく触れる秀星くんの手は、あたたかかった。また、さっきみたいにいつ呼び出されるかもしれないけれど、それでも、こうして、体温を分け合える時間が、何よりも愛おしい。願わくは、こんな幸せが、ほんの少しでも長くあればいい。






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